シグネットリングの始まりは、紀元前 3500年頃、メソポタミア文明の時代だと言われています。
この頃はまだ指輪ではなく、ローリングシーリングといわれる筒状のものでした。
筒の表面に絵柄を彫り、粘土の上で転がしてスタンプのように使っていたようです。
このローリングシーリングは、現代の判子の役割を果たしていてメソポタミアの人々にとって書類や商品の有効性を表す大切な印でした。
遠くの国に物品を運ぶときにも、この印を押していたそうです。
筒状のローリングシーリングがリング状に変化したのが古代エジプト時代と言われています。当時の指輪はファイアンスリングと呼ばれています。リング状になったことで「これは自らが認めた印である」という意味合いが強まりました。それによりファラオや貴族、宗教的指導者が自らの権威を表すために身につけるようになります。
その後中世に入り、14世紀のイングランドの国王エドワード2世が全ての公式文書に国王のシグネットリングで署名すること定めました。
これにより、シグネットリングは上流階級には欠かせないものとなったのです。初めは絵柄が彫ってあったシグネットリングですが、この頃には家紋やイニシャルなどが彫られるようになり、手紙や重要な書類に頻繁に用いられるようになりました。
当時は溶かしたシーリングワックスにシグネットリングを押し込むという方法で印を押しており、シグネットリングのワックスは多くの歴史的文書から見つかっています。
当時のシグネットリングの効力は絶大で、シグネットリングの持ち主が亡くなった後は死後に文章の偽造をされないように破壊していたほどでした。
しかし代替わりのたびにオーダーメイドするには莫大な費用がかかるため、徐々に父から息子へと代々受け継がれるようになります。王族や宗教的指導者など、本当に裕福な階層だけが一代限りの専用シグネットリングを持っていました。